昔、HPで家の歴代の犬たちのことを書いていました。
データを失くしてしまう前にブログに移しておこうかな…
今日ふとそんな風に思いました。

今日はリンダの家の子記念日だしね。

リンダという犬は、G・シェパードとは思えないほど
人間にも動物にも本当に優しく、穏やかな性格の持ち主でした。

家に迎えた時には3歳でした。

もう昔昔のお話です。


[ ”品性が悪い” と言われた犬 ]

大きな展覧会で悠然とトップを走っていたと言うのに、
銃声に反応してしまっただけで、何とドンケツに落された。
この世界ではこれで 「犬の品性が悪い」 と言う烙印を押すらしい。
たったこれだけの事で、大きなタイトルと同時に飼い主からの「 興味 」をも
失ってしまった犬…それが、リンダ。 
ある訓練所を介して、飼い主が250万円で購入してきた犬でした。


私が初めてリンダと出会ったのは2000年の夏。
ステファニ-が亡くなって間もなくの頃でした。
犬の世話をすると言う( 私としては格好の )アルバイトを以前から決めていた為、
今さら断ることも出来ず ヒクヒクしながら行き始めたのです。 
私自身は部分的に死んでいるような状態でしたが、ここに居る愛情に飢えている
犬たちの世話をしている間だけは気持ちが安らぐようでした。
バイトを紹介してくれたおじさんから、「リンダという犬には気をつけなさい、
品性が悪いから噛みつくかもしれないからね。」…と注意を受けていたので、
リンダとの初対面はかなり慎重に慎重に…と、気を使っていました。 
けれど実際に犬舎に入ってみると、リンダはたちまち私の前でひっくり返り、
お腹を見せたのです。


「リンダが吠えたら半殺しにするくらいに棒で殴ってくれ。」
「アイツはそのくらいやらなきゃダメなんだ。」
「躾けはキチッとしないといけないんだ。」
私の雇い主である社長にそう言われたのは、バイト初日の昼でした。 
雇い主に返答を返すのもどうかと思ったけれど、「分かりました」とは嘘にも言えず、
「 棒でなんて叩きませんから。」と一言。
このやり取りの直後、この家のお手伝いさんから私は忠告を受けました。
「もし、社長がワンちゃん達を虐待しているところを見ても、決して止めないで下さい…」
と。


止めたり、犬をかばったりしようものなら、なお更逆上してエスカレートするのだと言う。
時には止めた側がとばっちりをもらうこともあると言うのです。
「ワンちゃん達の事が可哀想だと思ったら、どうか絶対に止めないで下さい。」
優しいお手伝いさんに私は何回か念を押されてしまった。
聞かされた数々の「躾ける為の暴力的虐待」は、
今までよく致命傷を負うものが出なかったと、厭きれ返るばかり。


これでリンダが初対面の私にいきなりお腹を見せたのかが分かりました。 
---誰にでも即、降参すること---
ここで生きる為のリンダなりの知恵だったのです。


大好きな犬の世話をしてバイト料を頂けるこの仕事は最高だったし、
一緒に働くお手伝いさんも本当に心の優しい人で恵まれていましたが、
程なくして私はここのバイトを辞めさせてもらうことになりました。
リンダへの「 躾け 」を目の前で見てしまったのです。
躾けをしなければならなかった理由…
それは、「ハウス!」と言う指示に一発で従わなかったから。
社長の巨体から発せられる大きな声と飛び出す手足に怯え、
すでに恐怖で小さくうずくまっているリンダのお腹を、さらに蹴り上げたのです。


社長の顔も怒鳴り声も暴力も怖かった。
でもこの事態に黙っている事の方がもっと恐ろしかった。
リンダはどうなってしまうんだろう!? 「止めて下さいーーっ!」
お手伝いさんとの約束は守れませんでした。
社長はもの凄い形相を私に向けたけれど、暴力はエスカレートする事なく、
そのまま立ち去って行きました。
リンダは少しだけ出血をしました。可哀想で涙が出ました。
本当の飼い主から第三者が守ってやる事など出来るわけがない…。
とても見ていられないと、即辞めさせてもらえるようにお願いしました。


アルバイト最後の日に、リンダがお手伝いさんと一緒に玄関まで送ってくれました。
「 何だかリンちゃんとは又会えそうな気がするよ 」 「 リンちゃん、元気でね 」
そう言って別れてから一年後、
リンダは本当に家の子となって私のところにやって来ました。


飼い主がとうとうリンダを手放す事に決め、里親を探すことになった時に
私の名前が挙がったのです。
血統も良く、まだまだ仔犬も産める。 犬を食いモノにする人たちにとって
250万のリンダを只でもらえるとなれば、訓練所だって他のブリーダーだって
欲しいのです。( おそらくは、喉から手が出るほど… )
でも出産マシーンの一生、もしくは「 持ち主 」が転々と変わる事も珍しくない
シェパードの世界。リンダの幸せを心から祈ってくれたお手伝いさんのはからいで、
一番に私の名前が出たと言う話は後になって聞かされました。


当時の私はまだペットロスから抜け切れず、(エルザは居ましたが)
新しく犬を迎える事に対して表現出来ないくらいの恐怖感を持っていました。
同じ苦しみを繰り返すことへの恐怖です。
それでも引き取ることが出来たのは、決して正義感や優しさが心の中の恐怖に
打ち勝ったのではありません。この時は突然の電話で、その場で「 YES 」か「 NO 」かを
即決するように言われ、悩んだり迷ったりしている時間が全くなかったこと、
そしてYDR (ヨコハマ・ドッグレスキュー)の北浦氏との約束を
果たしたいと言う気持ちがずっとあって…。
こんな状況だったから踏み切れたのだと思います。  


しばらくの間、どんな人に対しても降服してみせる例の態度は続きましたが、
リンダがようやくここを終の棲家と安心してくれた頃に、自然と全くやらなくなりました。


犬にも人にも優しい、本当に穏やかな性格のリンダ。 最高の家庭犬です。
犬の品性って何でしょう。 何で測って、どこで良し悪しを決めるものなのか。
犬を商売にしている人たちの言葉には何の裏付けも、そして愛情の欠片もない。
私にとって、全くゴミ箱行きの言葉ばかりでした。


私の足元で眠っているリンダ。 今、ここで銃声の音がしたとしても、
たぶん目も開けずに耳をピクリと動かすだけで、昼寝を続行することでしょう。


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